6 . 大都市の力を国の成長に活かし、 名古屋圏の発展に尽くす

「国の形・地方自治のあり方」を抜本的に見直す検討

〇地方自治制度の歴史

  • 明治4年(1871年)廃藩置県
  • 明治21年(1888年)市制町村制
  • 明治23年(1890年)府県制
  • 昭和18年(1943年)東京都制
  • 昭和22年(1947年)地方自治法制定
  • 昭和31年(1956年)指定都市制度創設
  • 平成4年(1992年)国会等の移転に関する法律成立
  • 平成11年(1999年)機関委任事務廃止、国と地方は対等
  • 平成17年(2005年)三位一体改革(国から地方への税源移譲)
  • 平成18年(2006年)地方制度調査会「道州制のあり方に関する答申」 
    道州制特区法公布
  • 平成11年(1999年)〜平成22年(2010年)平成の市町村合併
国-都道府県-市町村の3層構造

国と地方のかたち、すなわち国-都道府県-市町村の3層構造は、明治4年の廃藩置県、明治21年の市制町村制、明治23年の府県制で確立され、戦後は昭和22年の地方自治法の制定によって制度化されました。その後、平成11年の制度改正により機関委任事務が廃止され、国と地方は対等協力関係に移行し、平成17年の三位一体改革によって初めて国から地方へ税源移譲が行われました。

さらに平成18年道州制特区法公布により、将来的に道府県を廃止し、もっと広いエリアを管轄する道州に再編することで、国と地方のかたちを抜本的に見直す議論が一時盛んとなりましたが、下火となりました。

大都市の扱いについては、暫定的な制度として、昭和31年に指定都市制度が創設されましたが、その後抜本的な制度改正はなされておらず、大都市は道府県並の権限はあるもののあくまでも市町村=基礎自治体と位置づけられており、東京都以外大都市の力を国の成長に活かしきれていません。

主張のポイント

コロナパンデミックの中で、改めて国の地方のかたち・あり方を見たとき、例えばコロナ専用病院の緊急整備やコロナ病床の確保一つ取り上げても、国と都道府県の役割分担・権限は曖昧なため進みません。またコロナ感染者が急増しているのは主に大都市であり、市民に密着した行政を行っている指定都市にむしろ権限を集中させた方が、より効率的・効果的に成果をあげることができたのではないかと思います。

市議会議員の経験から

議会議員の経験から言えば、本来国と地方は対等な関係であるはずですが、膨大な通知により、箸の上げ下ろしまで指示がありますし、国の補助金も各省庁ごとに補助金要綱が定められるため用途が絞られ、使い勝手が悪い場合があります。また国家公務員の定員が厳しいため、研修と称して地方の職員を国の省庁に配属させ、地方の職員が国の実務を担う場合も往々にして見受けられます。

世界が激変し、国内外の課題が山積する中で、改めて国の役割、地方の役割は何か、その中で大都市のカを国の成長に活かすために、大都市を地方自治制度の中でどう位置づけるのかど、明治期以来続く根本の「国のかたち・地方自治のあり方」を問いていきたいと考えています。

大都市の制度的な問題についての補足

政令指定都市の問題

横浜市や、大阪市、名古屋といった大都市は、政令指定都市と言われています。その政令指定都市の設置根拠は、地方自治法252条の19の「大都市に関する特例」にありますが、その内容を見ると、政令指定都市とは人口50万人以上の市の中から政令で定める市であり、道府県が行う事務の全部または一部を政令に基づき処理するとあり、全て「政令」に委任されています。

このため法律の中で大都市の定義や役割、使命等が一切書かれておらず、極めて不十分な位置づけとなっています。また道府県との役割分担が曖昧であるが故に、国民生活の観点から様々な制度的な問題が生じています。

災害において

東日本大震災や熊本地震で大き被害を受けた仙台市や熊本市は、十分な行政能力がありながら応急復旧に関する権限が県に留保されていたため、特に災害復旧住宅の建設がスピーディーにできず、長期間の避難所生活を余儀なくされたと聞いています。自衛隊への災害派遣要請も県を通さないとできません。(現在は、自衛隊への災害派遣要請を除き、応急復旧の権限は指定都市に下されています)

新型コロナウイルス感染症対策において

今般の新型コロナウィルス感染症対策においても、特措法上、ほとんどが都道府知事の権限となっており、予防接種の実施や保健所の積極的疫学調査等を除き、地域の実態に応じた弾力且つ強力措置が名古屋市の権限でできない制度となっています。大規模災害の対応は市でできてコロナはできない、矛盾があります。

少し難しい話をしましたが、国の様々な課題、例えば人口減少の問題とか少子高齢化の問題、あるいは経済の再生、環境の問題等々、国だけでは解決できない課題に対し、行政能力があり産業基盤が整った大都市にもっと担ってもらい、国と協力して解決策を導いてもらうことが必要だと考えており、国として名古屋市をどう位置づけるのか。「国のかたち・地方自治のありか」の議論の中で問うていきたいと考えています。